英語学習にSitcom(シットコム)ドラマがおすすめな理由

英語学習の教材も学習法に関する書籍や記事も巷に溢れかえっていますが、アメリカの大学院に留学した筆者が、最も効果的とおすすめできるのは、ドラマをみることです。特にSitcom(シットコム:シチュエーションコメディーの略)と呼ばれるジャンルのものが圧倒的におすすめです。

この記事では、シットコムがなぜ英語学習に効果的なのかをお伝えしつつ、私の好きなシットコムをいくつかご紹介します。

 

1. 英語学習の目的

あなたの英語学習の目的は何でしょうか。

留学したい、ビジネスで英語が必要、外国人の友達がほしい、外国で生活したい、英語圏の文化を知りたい、など理由は人それぞれありますが、まずは

「日常会話を理解できるようになる」

というのが基礎になるのではないでしょうか。一人で学問的な文献や専門的なビジネス書が読めるだけで満足、というなら別ですが、留学にしろビジネスにしろ、社会的な活動・生活に日常会話の能力は必須だと思います。

日常会話ができなければ、同僚や友人と雑談などたわいないちょっとした会話ができないだけでなく、授業中や会議中、卑近な例に例えてプレゼンやディスカッションされている内容が理解できないということになります。

そして、「生きた英語」「使える英語」を学び、自分も使えるようになりたい、と考える方も多いのではないでしょうか。シットコムドラマは、そんなあなたに最適の教材であり、強力なツールなのです。

 

2. シットコムドラマが英語学習(日常会話)に最適な理由

(1)楽しみながら、だから、「継続」に向いている

語学の勉強は、継続が重要です。

一夜漬けで、テストはどうにかなるかもしれませんが、リアルな場面で英語を使えるような力を身につけようと思えば、残念ながら一夕一朝にというわけにはいきません。できれば毎日、継続的に英語に触れる時間が必要になります。

でも、毎日、英語を「勉強」する時間を作ろう、と思うとなかなか億劫になります。よほど高いモチベーションと根気がなければ、3日坊主、とは言わずとも途中で挫折してしまう方はかなり多いのではないでしょうか。

できれば頑張らずに、楽しみながら、英語が身につけばいいのに、と思いませんか?

ドラマであれば、自分の好きなドラマを見るだけなので、「勉強しなきゃ」というストレスからではなく、リラックスしながら、笑いながら、楽しみに見ることができます。これこそが「継続」に最も向いている理由です。苦にならないどころか、疲れて学校や仕事から戻った後の楽しみになるのです。「続けよう」と思わなくても、続けられてしまいます。

(2)シンプルで簡単だけど、すごく「使える」英語を学べる

単に、楽しめるという点だけなら、ジャンルはアクションでも、サスペンスでも、ホラーでもよさそうですが、日常で使える英語を学びたいなら、断然シットコムというジャンルをおすすめします。理由は、当たり前ですが、シットコムであれば、日常よくあるシチュエーションで、日常会話が詰め込まれているからです。

例えば、私はかの有名なアクション映画「ミッション・インポッシブル」のシリーズが大好きなのですが、劇中の会話は、国際的な犯罪とか、スパイとか、そういう内容なので、日常会話とはずいぶん違います。映画としてはもちろんとても面白いのですが、見せ場はアクションであり会話ではありません。もちろん劇中で会話している場面もたくさんありますが、そもそも使われている言葉が難しかったり、シチュエーションが「非日常」なので、フツーに使える英語ではなかったりします。知らない単語が出てきた時も、初見であれば、今何が起こっているのか、次に何が起こっているのか、予測しながら聴くのもほぼ不可能です。

その点、シットコムは、物語の舞台が「日常」なので、家とかカフェとかバーとか、そんな誰もがよく行く場所で、家族や友人と話す場面で、物語が構成されます。そうすると必然的に、シンプルで簡単でよく使われる単語が多くなります。中学校3年間で学んだ英語がかなりの頻度で出てくるので、自分の中で意味のある音として入ってきやすいです。

また、ある意味「ありきたり」な場を舞台にするので、当然、会話の面白さで物語が動き、会話こそが見せ場になります。まさに「使える英語」が学べるというわけです。

(3)予測しやすいから、話についていける

後述しますが、英語学習のためにシットコムを視聴するのであれば、英語音声・英語字幕で見ることをおすすめします。ただ、「それでは英語が分からなくて、話についていけない」と心配される方も多いでしょう。確かに、リーガルものとか、医療ものとか、専門用語がたくさん出てきそうなドラマであれば、理解するのは難しいでしょう。

だからこそ、シットコムをおすすめします。なぜなら、シットコムは日常よくあるシチュエーションを描いているので、使われている英語がシンプルなだけでなく、言葉が100%理解できなくても、映像を見ていれば、話の成り行きがなんとなく理解できるのです。

(4)その国の文化の中でTPOにあう言葉の使い方が学べる

「日本語では曖昧だけど、英語ではYes/Noをはっきり言う」

アメリカでは上司であってもファーストネームで呼ぶ」

アメリカでは、すぐに"I Love You"という」

こんなことを聞いたことがある、という方は多いのではないでしょうか。

実は、このまま信じて英語圏で生活すると、ミスコミュニケーションの危険が非常に高いです。100%間違っている、とまで言いませんが、時と場合によってかなりマズイ雰囲気になり得ます。

例えば、「Do you wanna come to my place tomorrow?(明日うちに来ない?)」と誘われて断るとき、いきなり「No」と言うのは非常に失礼だなと受け取られることが多いです。2年間アメリカで生活していた私は、この手の誘いに対してアメリカ人がいきなり「No」と回答するのを聞いたことがありません。普通は「ありがとう。でも明日は予定があって(難しい)。(Thanks, but I already have a plan for tomorrow.)」など、いったんお礼を言ってから、行けない理由を伝えます。そうです。このケースについては日本語と同じなのです。

一方、「上司をファーストネーム呼び」は、日本社会では珍しい部類に入ると思いますが、確かにアメリカ社会では普通に起こり得ます。ただし、ファーストネーム呼びするのは、あくまで相手との間に一定の関係値があるときです。例えば、毎日職場で顔を合わせている直属の上司であれば、ファーストネーム呼びするのは自然ですが、初対面の際は、通常「Mr. 〜苗字〜」で呼びます。よく知らない相手のことを初めからファーストネームで呼ぶことは基本的にありません

このように、語学ですから、当然、その国の社会・文脈の中でTPOに合わせた使い方をする必要があるわけですが、シットコムはそれを学ぶのに最適なのです。なぜなら、上記のような状況は、日常よくあるシチュエーションであり、シットコムではそういう場面が描かれる頻度が多いのです。物語を見ながら、どういうシチュエーションでどういう英語を使っているか、実に自然に理解することができるのです。

 

3.シットコムの見方

(1)音声は「英語」、字幕はオンで「英語」を選ぶ

言うまでもありませんが、「日本語吹き替え」で視聴しても英語学習にはなりませんので、当然、音声は英語を選択してください。

問題は字幕をどうするか、です。

はじめから字幕なしで理解できる方は、そう多くはありませんので、「いつか字幕なしで映画やドラマが見れるようになれたらな」という方が多いのではないでしょうか。

そんな方が、英語音声・字幕なしで見ると、「何を言ったのか」理解できないまま、どんどん話が進んでしまうことになります。前述の通り、シットコムは日常よくあるシチュエーションで物語展開されるので、なんと言っているかわからなくても、なんとなく物語についていくことはできるかもしれません。でも、それでは英語を流し聞きしているだけで、自分の中に意味のある音・言葉として入ってきませんので、英語学習になりません。

一方、英語音声・日本語字幕で視聴すると、今度は「日本語」の情報に頼りすぎてしまうので、耳が英語を理解することをサボってしまいがちです。聞き流しで英語が身につく、といった謳い文句はよく見ますが、私はその謳い文句には懐疑的です。例えば、フランス語を勉強したことない人がフランス映画を日本語字幕でたくさん見たとして、フランス語が意味ある言葉として聞き取れるようになるかといえば、難しいのではないでしょうか。

なので、おすすめは英語音声・英語字幕での視聴です。シットコムではシンプルで簡単な英語が多く使われるのですが、慣れていない日本人にとって、会話のスピードはとても早いので、ごくシンプルな英文でも聞き取るのが難しかったりします。英語字幕を見れば、「なんと言ったのか」が文字情報として入ってくるので、聞き取りやすくなります。

もちろん初めはそのスピードについて行くのは簡単ではありません。字幕を読み終わる前に、次の会話にうつってしまいます。ただし、先ほどもお話しした通り、シットコムは日常が舞台なので、それでもなんとなく話の流れは分かります。例えば、初めの頃は、「Hi」とか「I don't...」「Bye」とか、そんな単語しか文字と音とを一瞬で掴めないかもしれません。でも、見続けているうちに、そのスピードに耳も目も慣れてきて、少しずつ少しずつ、文字と音を一致させて理解できる部分が増えていきます。

(2)一言一句理解しようとしない

重要なのは一言一句、100%理解しようとしないことです。理由は、そうするとストレスになるからです。私も、留学を始めたばかりの頃、友人に薦められたシットコムのドラマを見始めたのはよいものの、「英語の勉強のために」と度々画面を一時停止して単語を調べたりしていました。でも、そうすると全然先に進まないから、面倒くさくなってしまい、だんだん楽しくなくなってきます。ここで見るのをやめてしまうと、英語に触れる時間がそれだけ減ってしまうのです。

とにかく楽しめることが継続の一番の鍵なので、私は途中から、分からない単語を調べるために一時停止したりするのをやめました。そうすると、はじめは理解できない部分が多いのですが、だんだん耳も目も慣れて、理解できるところが増えていき、話も面白いので、どんどん続きが見たくなっていきました。

つまり、面白い→毎日見る→英語に触れる時間が増える→どんどん理解できるようになる→もっと面白くなる、という好循環が生まれました。完璧を求めないことは、テストのためではなく使える英語を身につけたい方の語学学習において、とても重要なのです。

(3)ネットフリックスだと字幕の言語が選べる

英語音声・英語字幕、とお伝えしましたが、英語のドラマとか映画って、「日本語吹替(字幕なし)」か「英語音声・日本語字幕」しかないのでは?と思った方はいらっしゃるでしょうか。

ネットフリックスであれば、「音声」と「字幕」について、自分の好みで選ぶことができ、英語圏の作品を日本からネットフリックスで視聴する場合は、ほぼ確実に「英語音声・英語字幕」の選択が可能です。(最近、Amazon Primeでも一部作品で同様の機能があるようですし、他のプラットフォームでも同じことができるかもしれません。)

4.おすすめのシットコムドラマ

2021年11月現在、ネットフリックスで配信されているシットコムのドラマで、私が好きなものをいくつかご紹介します。

いずれも超有名なシリーズ作品なので、知っている方も多いかと思いますが、ご参考まで〜

いずれもネットフリックスで見れるので、見たことないな、という方は、ぜひちょっと見てみてください。

(1)Friends

超有名なシリーズ作品で、1話30分✖️1シーズンで25話程度✖️10シーズンで完結しています。大半が一話完結になっています。

1994年〜2004年に放送されたもので、少し古いですし、ファッションなんかは時代を感じますが、会話の内容が古くて使えないということは全くありません。

ニューヨークで暮らす、個性豊かな6人の男女がメインキャラクターなのですが、Friendsである彼らがカフェやアパートに集い、日々起きるコミカルなハプニング(恋愛、仕事、家族関係など)について、面白おかしく会話を繰り広げます。

あまり難しいことを考えず、安心してケラケラ笑えます。

ざっくりいうと、アラサーの6人それぞれが、日常生活の中でのいろんなハプニングを共有し、残りの5人のFrinedsが愛あるイジりで笑いに変えながら、支え合っていくというお話です。恋愛、仕事、家族関係などにおける悩みやハプニングが、普遍的で等身大なので、会話の中身に古臭さがあまりなく、とても身近に感じられます。

脚本も演技もユーモアに溢れていて、抜群に面白く、かつ「使える英語」がてんこ盛りなので、英語学習の教材としても最適です。

 

(2)How I Met Your Mother

こちらもシリーズ作品で、1話30分✖️1シーズンで25話程度✖️9シーズンで完結の、一話完結モノです。

2005年〜2014年に放送されたもので、ニューヨークに暮らす個性的な5人の男女がメインキャラクターなので、Friendsと共通部分も多く、比較されることも多い作品です。

タイトル通り、主人公の男性が運命の女性と出会って結婚するまでのことを、子供に語って聞かせる、というテイに一応なっていますが、9シーズンもあるので、もはやそこが主眼というよりは、5人の男女の友情や恋愛が描かれた作品になっています。

●真面目な恋愛をしたい人/ラフな恋愛を楽しむ人

●「キャリア>恋愛」な人/「恋愛>キャリア」な人

など、対照的なキャラを配置しながら、友人同士の彼らの日常に起こるハプニングをコミカルに描いています。難しいことは抜きで、ケラケラ笑えます。

ちなみに私は、アメリカ留学中、この作品を勧められて見始め、そのうちどんどんハマっていきました。結果的に、日常会話における英語力アップに、多大な貢献をしてくれた作品です。また、「I love you って付き合いはじめの頃は言わないんだな」とかそういう生活・文化面でもこの作品に教えられたことは多いです。この作品との出逢いに心から感謝しています。

 

 

(3)Modern Family

こちらもシリーズ作品で、1話30分✖️1シーズンで25話程度✖️11シーズンあります。2009年〜2020年に放送されたもので、留学中によく友人・知人に勧められた作品です。

両親と子3人の典型的な?家族とか、老いた夫と外国人妻とその連れ子とか、赤ちゃんを養子にしたゲイカップルとか、いろんなタイプの家族が出てきて、タイトル通り、現代的な家族のあり方が、コミカル(シニカル)に描かれています

私も見始めたばかりで、まだシーズン1を見ていますが、この作品は「心温まる、ほっこりストーリー」というよりは、日常生活でいろいろうまくいかないこと(何かの機械が故障したとか、子どもがスポーツ苦手、とかそういう類のこと)に登場人物たちが奮闘する様を、シニカルに笑える感じ描いています。

 

 

(4)Full House / Fuller House

同様に、1話30分(1話完結)✖️1シーズンで25話程度のシリーズ作品です。

Full Houseの方は、1987年〜1995年に放送された全8シーズンの作品です。

妻を亡くした3人の子を持つ30代の男性を助けるため、二人の友人が引っ越してきて、男三人で育児に奮闘する姿を、コミカルに描いた作品で、サンフランシスコが舞台になっています。

とても健全な(笑)内容なので、安心して笑えるし、コミカルでHeart Warmingな作品でほっこりできて、仕事で疲れて帰ってきてから見るのに、ちょうどいい感じです。上で紹介したModern Familyがシニカルな笑い中心なのに対して、このFull House / Fuller Houseは、男三人の子育て奮闘物語ではありますが、古き良き、ほっこりな家族のストーリーです。

私が子供の頃、NHKの教育テレビで放送されていたので、ちらっと見たことある方も多いかと思います。私も子供の頃テレビで見たことはあったのですが、その時は日本語吹き替えで見ていたので、何が面白いのかよく分かりませんでした。大人になって、英語が分かるようになって、英語でこの作品を見ると、登場人物たちの会話の面白さに虜になりました。出てくる子供たちも可愛らしいので、オススメです。

そして、このFull Houseの続編として、Fuller HouseNetflixで制作され、2016年〜2020

年の全5シーズンで完結しています。Full Houseは育てる側の男性3人が主人公だったのですが、そのFull Houseで育てられる側だった子供3人が大人になって、自分たちの子を同居して一緒に育てていくようなお話しになっています。

Full House/Fuller Houseには、いくつかのエピソードで日本が登場します。メインキャラクターの一人が歌手として日本に来たり、日本のアイドル(Sexy Zone)を好きになったり、日本で結婚式を挙げたり、と日本が何度か出てくるので、見ているこちらも少し嬉しくなったりします。

 

(5)Big Bang Theory

こちらも1話30分(1話完結)✖️1シーズンで25話程度✖️12シーズンで完結の、一話完結モノです。2007年〜2019年に放送されています。

4人のインテリ・オタク(男性)が、隣に引っ越してきた美女と織りなすコメディです。4人は世界的に有名なMIT(マサチューセツ工科大学)所属の科学者で、超優秀なのですが、超オタク。特にシェルドンという人物が、輪をかけて超変人で、頭が良すぎて常識ハズレにも程がある、という設定になっています。こんな奴とは友達にはなれないなと思いますが、ずっと見ていると、まぁなんだか憎めないというか、見てる分にはすごく面白い奴だな、という感じです。

超インテリ・超オタクが主人公なので、しばしばトリッキーなワードが使われ、他に紹介した4作品に比べると英語の難易度は高めです。が、お話としては面白いです。天才と●●は紙一重、とか言いますが、それが溢れているストーリーになっています。

 

 

というわけで、とりあえず5つのシリーズ作品をご紹介しました。

いずれも有名なシリーズ作品で、普通に楽しめますし、英語の勉強にもすごくオススメですので、ぜひお試しください。